鱚介オリジナル工房

竿立て・・最終章は全てアワビ巻き!!

投稿日:

画像(180x135)・拡大画像(480x360)

最後の「アワビ巻き」

 もう、かれこれ十数年前のことだった。投げ竿はどんどん進化しつつあり、多くの投げ釣りマンは高価にも拘らずその素晴らしい高級竿を使い始めていた。
 ・・・それに引き替え、その格調高い竿に決して似合わないサオ立てが恥ずかしくも無く使われていた。
 
 サオ立てとは、独立した一つの釣り道具として成らないのだろうか? ・・随分悩みながら、ゴルフシャフトやスキーストック等のお古を改良し、それなりのサオ立ては出来た。・・・しかし、それでは何時までたっても独立は出来ない・・。

 軽くて丈夫、美しさと品格がともなった「高級感にあふれた竿立て」が欲しい。・・・どうせ造るなら、心して思い切ってやるしかないだろう。掛かる資金のことなどは考えもせず出発してしまったのである。・・・サオ立てを造るには、シャフト、竿受け、石突きの3品が最低必要となる。これらすべては特注で造らねばならない。
 
 先ずはマミヤOPの友人を通じて、ゴルフクラブを製作していた同社に「カーボンシャフト」で造りたいことを相談・・・。ただし、ゴルフシャフトでは柔らかすぎてダメ。肉厚で軽く、塗装は焼き付けで、鱚介マークは入るか?など等、・・・兎も角、相手が気をそらさぬよう、間をおかず、気を入れて交渉したのである。
 そして半年後、出来上がったカーボンシャフトは細身軽量で、予想を超える出来栄えだった。

 次は「竿受け」と「石突き」である。これらはシャフトに合わせたサイズて造らねばならない。

 竿受けは、兄弟の契りを交わした高知の堀オリジナル工房を営む堀川宗雄さんに依頼・・。「ケヤキ材」から、手作業での削り出しでプロトタイプを造ってもらったのである。
・・しかし、それからが大変だった。そのプロトタイプと同じものを造ってくれる木工所を探さねばならなかった。小田原市内には多くの木工所があるが、全く縁がない。・・・そこで小田原市の産業課に問い合わせ、小田原木工連合会を通じて、引き受けてくれそうな木工所を紹介してもらった。

 問題は「竿受け」を造るには、細かで多くの手作業が伴う。言うなれば「木工芸品」を作れるような木工所でなければならなかったのである。
 幸いにして・・と言うか、小生の高見澤姓を聴いた社長さんが「あんたは長野県出身か?」と尋ねたのである。確かに、祖先は南佐久です・・と言うと、自分は川上村出身だと言う。・・同じ小海線(小淵沢〜小諸)の沿線だったのである。
 プロトタイプを見て、最初は怪訝であった社長さんだったが、同じ故郷という事ですっかり打ち解け、快く引き受けてくれたのである。

 そして最後は「石突き」である。小・中時代の同窓生が二宮で町工場をやっている。こんな細かな仕事だから果たしてやってくれるだろうか? 
 直径10ミリ×長さ200ミリのステンレス棒に、内径9ミリ×深さ70ミリの穴を掘り込むのである。・・・しかし、幼友達とは有り難いもの・・・、こちらも快く引き受けてくれたのである。
 シャフト、竿受け、石突きの3品、全て人との縁がこれを繫げてくれたのである。

 そして、これをもとに色々な「化粧巻き」を施し、独立した一つの釣り道具としての「竿立て」が完成したのである。
 
 ・・・それ以降、大手釣りメーカーも専用のサオ立てを造り販売しているが、高価であり、手造り感など無い工業製品ばかりである。・・・だから、正直言って、今の「鱚介のサオ立て」は決してそれらに引けは取らないし、最良、最高の竿立てであると自負している。

 さて、以来、20年に近く、既に材料である3品は無く、あと数本で絶版と言う危機的状況を迎えていた。・・しかし、これで辞めてしまってよいのだろうか??
 ・・・最後に、これまで造って来た中で一番人気の「アワビ巻き」を最終章として、もう一度挑戦してみたい気持ちに強く駆られたのである。

 早速行動を起こし、過日、竿受けは新たなデザインで出来上がった。ただし、これまでの小田原の木工所では専用のバイトが無く出来なかった。止む無く、3軸、5軸のコンピューター制御のNC旋盤を持つ、秋田の木工所にお願いしてみたのである。
 して、確かにきれいに仕上がった。・・・世の中が進化していることを改めて知ったのである。

 そして一番の問題はシャフトである。既に製造中止した会社で一からは出来ない。何とか、残った在庫をかき集め、50本だけ従来と同じ物が手配できた。

・・・そして石突きも完成した。

 後は、・・今、この50本を、気持ちを込めて造りつつある。
 シャフトの色は「ブラウン」と「ワインレッド」のみ、アワビの色は一番人気の「ブラック」のみである。
 また、正直なところ、自分ではどうしても上手く出来なかった「アワビ巻き」下部のカラースレッドを、この最終章では「工房哲」さんにお願いすることにした。心残りをしないよう綺麗に巻き込んでもらい、完成度を高めたかったからである。

 出来上がるのは今月いっぱい。7月1日から発売できればと思って居る。少々値段(15000円)は高くなってしまうがお許し願いたい。
 
「鱚介の竿立て」は、この50本を持って終えるが、もう恐らく、これ以上の竿立ては生まれないのではないかと思う。
 自分自身、無くしてしまうことは勿体ないと考えるのだが、3品の手配等、もう、これ以上は無理なのである。
 
 決して、買い急ぎを求める訳では無い。・・が、この際、本当に「この竿立ての良さを知った方」にお使い頂けることを切望しているのだが・・・。





-鱚介オリジナル工房

執筆者:

関連記事

鱚介アブミ 購入専用サイト新設

 鱚介オリジナル工房と(株)はりよしがコラボで開発したキスの専用バリ、鱚介アブミの4号から6号までが、ほぼ出そろいました。 特徴は、これまでの関東アブミをベースに、細軸軽量で仕上げ、針先を化学研磨した刺さりの良いものとなりました。 種類は、5号、6号が茶焼き、黒焼き、青焼きの3色、4号ではケイムラが完成しております。 昨年より発売されたこの鱚介アブミは、これまで鱚介オリジナル工房が(株)はりよしさんから委託を受け販売してまいりましたが、この度、お客様からの強い要望もあって、新たに専用の通販…

Loading

ハリ抜き(ハリ外し)発売!!

虎斑竹のハリ抜き! 世界的にも珍しく、日本で唯一高知県の須崎市に育つ貴重な竹「虎斑竹」で、ハリ抜き(ハリ外し)を造りました。 現地から取り寄せた虎斑竹を適当な幅に割り、一本一本丁寧に、削り、穴を空け、細かな細工を加え、磨き、最後にエポキシ樹脂で強化塗装を行うなど、全てを手作業で行いました。 ハリ抜きの存在は薄いですが、投げ釣りには無くてはならないもの。こうした小物でも、完成まで実に20数工程もかかりました。 また、工業製品とは違い手造りのため画一化したものは造れません。太さが不揃いだったり…

Loading

竿立て、まもなく完売です!!

アワビ巻きで化粧 鱚介の竿立て、アワビ巻きの最終バージョンは間もなく完売となります。在庫数は10本ほどです。完売後、再び復活することはありません。恐らく、他のメーカーには造れない逸品でもあります。 こ …

Loading

軽量の半ブラ天秤オモリです

台風やその影響からか、中々投げ釣り環境が整わない・・・。そんな中、釣り道具箪笥から昔懐かしい高田鉛工業の「シャトルライナー」と云うテンビンオモリが出てきた。・・・軽量な18号(4本)と15号(10本) …

Loading

no image

サオ立て完成・記念発売!!

お待たせしました。鱚介オリジナル「サオ立て(KRSS)」・・やっと販売の段階を迎えることが出来ました。これを記念して、この日記をお読みいただいている方に特別価格で記念セールをさせて頂きます。概要、取り扱い上の注意をお読みの上、ご購入いただける場合は是非メールにてご注文ください。また、ご友人へのご紹介等よろしくお願い致します。KRSS(鱚介オリジナル竿立て)の概要投げ釣りに無くてはならない、ロッド・スタンディングサポーター、このサオ立ては、砂浜海岸での使用を目的に作りました。お客様がお使いのサオの品…

Loading

2024年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

アーカイブ