去る10月9日、パソコンと携帯電話を併用した「特殊振込サギ」に引っ掛かってしまった。・・・お前は馬鹿か! お前はアホだな!・・と言われても仕方ない。・・・が、この種の犯罪のプロである相手の仕掛けと話術にまんまとしてやられてしまったのだ。だが、やはり憤りは強く、同時に情けなさを感じてしまう自分がここにいる。 ただ、高い授業料を払って得たこの経験は貴重であり、これをこのまま放置するより、たとえ読み手が少なかろうと公表し、少しでも同じような被害を防ぐことに繋がれば・・、そんな思いから、ぐっと恥を忍んでここに掲出することにした。長い文であるが最後まで目を通して頂きたい!! ・・・話題にして頂いて結構であるし、皆さんに広く伝えて欲しいと思う。なお、この事件は、本文に沿った内容で警察には報告を済ませていることをお断りしておく。
動 機
令和5年10月9日の午前6時ころだった、パソコンを立ち上げシーサイドブログを開いところ、上段に見慣れぬ案内広告(確かマイクロソフトの安全に係るコマーシャル?)があった。普段であれば開くことはしないが、パソコンのセキュリティに関するものであり、興味を感じつい開いてしまったのである。
一瞬、モニターの画面が暗くなり、「警報音」とともに、大きく、「マイクロソフト インターネット セキュリティ」と掲げた画面が出た。・・そこには「あなたのコンピューターはハッカーに侵されました。至急、対応しなければ大きな被害が出ます。このパソコンは閉じられ使えません。これを解決するには、右下の電話番号に直ぐに相談してください。」(曖昧にしか覚えておらず正確ではないが・・)とあった。 私としては、相手はマイクロソフト社であり、マイクロソフト社が独自に行うセキュリティ上の措置である。・・・との思いから、不安と不信を感じながらも電話をしてしまったのだ。 もう一つの理由は、モニター上にはこれを消去できるような操作スイッチ類は一切なく、パソコンに詳しくは無い小生にはこれを避ける方法が分からなかった。 緊急を告げる音声に驚きながら、銀行口座への浸食などを考えると、兎も角すぐに対応しなければならない!・・・そんな意識が優先してしまったのだ。
対 応
電話番号は「050553○○○○」だった。自宅の黒電話を使い掛けると、電話口には外国なまりの流暢な日本語で、「私は、マイクロソフト社のセキュリティ担当者で、マイク ○○○○ ミラーです。」と名乗った。 自己紹介があり、写真付きのチームメンバーの履歴書が画面に写し出された。・・ 「あなたのパソコンは、トロイの木馬と思われるハッカーにより、今、完全に閉じられてしまっています。 これを今、当社で排除などの操作は出来ません。至急対応しないと、あなたのパソコンは使えなくなり、全ての情報が盗まれ、契約されている銀行口座からも被害が出てしまいます。・・被害を防ぐには、兎も角今すぐに、安全な当社のセキュリティ契約をしなければ解決できません。」と言う。 ・・その他、いろいろなハッカーのことを聞かされた。・・その時のモニター画面は、マイクロソフト社の関係と思われるような映像が次々と写っていたように思うし、・同時に警報音も消えていたようにも思う。
合わせて、「あなたと連絡できる電話と番号をお知らせください。」と言う。 止む無く、携帯電話、自宅電話番号を教えてしまった。すると、すぐに相手から携帯の方に電話が鳴り、以降は、パソコンのモニター画面と携帯電話を併用しながらの対応となった。
相手から「当マイクロソフト社のセキュリティ契約は3種類あります。 期間5年が5万円、10年が8万円、永久が30万円です。先ず、契約の種類を決めなければなりません。」と言う。
最短の「5年契約5万円」を選び回答する。・・と 「今すぐに契約金のお支払いが必要です。しかし、支払いは今パソコンが使えませんからパソコンでのお振込は出来ません。どうしたら良いかをお教えします。 ・・近くにコンビニはありますか? そう、すぐにそのコンビニに行って、アップルのギフトカード5万円を買ってきてください。 そのカードで支払いが出来ます。 もし、コンビニで使用目的を聞かれたら「個人で使う」と答えてください。 他の答えを言うと、あれやこれや聞かれ時間が掛かってしまいます。 急ぐ必要のある解決ができなくなってしまいます。」 また、「コンビニへの往復時間は何分くらいかかりますか?」と聞かれ、・・30分位だと答えた。 ・・「ならば急いで行ってきてください。 パソコンも携帯電話もそのままの状態にして、兎も角、緊急事態ですから、急いで買って来なければなりません・・。」と言う。
平塚駅南口近くのセブンイレブンに行き、アップルのギフトカードに5万円と金額を指定し購入した。 帰宅し、パソコンモニター上に用意された解答欄に「帰りました」旨を書き込む。・・・と、すかさず携帯からの声で、つぎのような操作が案内された。先ず、①「ギフトカードの封筒口を開け、カードにある番号をパソコン画面に打ち込んでください。慌てずに間違いのないように正確に入れて下さい。」と言う。 次に、②「カードと領収書をプリンターに乗せてください。」と指示され、そのように操作を済ませた。
ところが、直ぐに、相手から「あなたがパソコンから打ち込んだ英数文字に1字違いがありますよ! これでカードは無効となってしまいました。」・・と言うのである。・・「ついては、至急、新たなカードが必要です。間違いを訂正するため、10万円のモノが必要になりました。」と言う。 ・・そう言いながら、モニター上には小生が打ち込んだ数字とプリンターで送った映像が写し出され、確かに、小生の打ち込んだ英数文字の1字が違っていた。・・・間違いなく書き込んだのだが、これを見せられれば反論はできなかったのだ。 (後から、それが操作されていたのではないかと思っている。)
相手に対し、何故そちらで訂正できないのか? あなた達を信用して良いのか分からなくなった。私の方のパソコンは閉鎖しても良い。これを機会にパソコンの使用は止めたい。と申し出た。・・しかし、「それでは済まなくなりますよ! この問題を解決してからでないと大変なことになりますし、止めることは出来ません!」・・と、強く言われ、これに対し止む無く従うことになってしまった。
雨が降る中、車で、同じセブンイレブンに行き10万円分のカードを購入。 帰宅し、先ほどと同じように、今度は間違わないように慎重に操作し送金した。
・・暫く待たされた後だった。 今度は、「貴方が打ったキーボードそのものも、ハッカーに侵されているようです。英数文字が大小入り乱れて送られてきました。・・これでは今のものは使えません。無効になってしまいました。困りましたね。」・・などと言う。 「試しに、あなたの方から今使ったキーボードから、英数文字を何字か送ってください。」と言われ、早速そうしてみた。 相手からモニター上に送られてきた画面には、確かに、大小文字が不規則に並んでいた。・・・乗っ取られたと言うパソコンを使って、何故このような通信が出来ているのか不思議に思いつつも、尚も続けざるを得なかった。・・この頃から、不安がさらに増し、対応方法がさらに分からなくなってしまった。
・・・「対応が遅くなっています。今の10万円のカードは無効になりましたので、次は15万円が掛かってしまいます。直ぐに対応しなければなりません。急いで買って来てください。」と、重ねて強く言われてしまった。
ここで、相手の声が最初の人と違うことに気が付いた。・・それを訪ねると、「先ほどの担当者ミラーは、他のお客様の対応をしており出られません。私は上司の「ジャック ○○○○ ミリオン」です。・・と言い、最初と同じような、モニター上にマイクロソフトの文字が入った数名分の写真付きの名簿が示され、これが私です。どうぞよろしく!と西洋人らしき大きな顔写真が映しだされた。
それでも、私としては相手を信用してよいのか、正直、分からなかった。 「そちらは、次々と問題を掲げながら金額を釣り上げているように思う。何故、そちらで、こうした問題を事前に解決できないのか?」などと詰問したのだが・・・。。
すると、「これが最後です。これ以降は例え何かの問題があっても、それらは全て私の会社で責任を持って負担します。 振り込まれたお金ですが、マイクロソフト社で頂くのは最初に契約いただいた5万円だけです。 後の余分に支払われたお金は、全て貴方に現金書留郵便で5日以内に返金されますから安心してください。」・・と言う。 さらに、最後の振込は15万円と言いながら、何故か「10万円で良いです。」とも言った。 また、この時、相手から「返金の送り先となる貴方様の氏名と住所を教えてください。」と聞かれ、それを気軽に返答してしまった。
小生としても、振り込め詐欺事件は承知しているが、自らはパソコンの混んだ操作が分からない。モニターには、削除やカットするボタンは一切見当たらない。これを一方的に何らかの形で排除してしまうことも恐ろしい。 ・・正直言って、かなり焦りながらの行動だった。 コンビニ店を変更し、ファミリーマートに行き、買おうとした。しかし、私の挙動が不審だったのか、店員から使用目的を聞かれ、これを助けに船と思い、状況を話してみた。すると直ぐに、貴方の思っている通りですよ!それだったらお止めになった方が良いです!・・とのアドバイスを貰ったのだ。 迷っていた自分自身も決着せねばとの思いが強くあり、これを機会にカードの購入は中止し、ここで、対応を拒否をすることを決心したのである。
コンビニから戻ってから(時刻は8時過ぎた頃だった)、直ぐに相手に対して、体調が悪く気分が悪くなって買わずに途中帰宅した。そのため、午後に改めて対応したい旨を伝えた。・・が、相手からは、「兎も角急がないと、貴方の方に大きな被害が生じてしまいます。躊躇せずに緊急に対応しなさい!!」と、怒ったような、脅かすような態度で強く指導されてしまった。 ・・やり取りの結果、相手から「特例ですが12時まで待ちましょう、12時にこちらから電話しますから、いったん電話は切っても良いです。でも、パソコンは開いたまま、一切手を触れずに、そのままの状態で置いておいてください。」・・と指示された。同時に、「その間に10万円のカードを用意してください。」と、何度も、強く言われたのだった。
実は、この日(9日)午後から、私のパソコンの面倒を見てもらっている友人(プロ)が来てくれることになっていた。初めからその友人に連絡すればよかったのだが、携帯も黒電話も取り上げられた状態でそれが出来なかったし、また、対話を中断できる状態には無く、他の方法も無かったのである。
この時点で、やっと相手から解放され、携帯電話が使えるようになったのである。 急いで友人に電話を入れ事情を話した。・・直ぐに自宅に来てもらった。友人は、モニター画面を見て、即、これが振込めサギだと判断。同時に、パソコンのメインスイッチを切り、不愉快な画面を消した。・・この種のサギは、こちらで一方的にカットしても大丈夫、ハッカーに侵されていると言うのは嘘だと思う。・・・直ぐに、いろいろとチェックしてくれたが、何らおかしな点は見られない。・・と判断してくれた。また、心配だった相手に知らせてしまった携帯電話と黒電話に関しては、携帯電話は一日電源を切っておくこと、黒電話は留守電で会話録音にしおけば大丈夫だと言われ、そうしたのだった。・
・・云わば、この段階で緊張した2時間余から解放され、一定の解決を見たのである。
その後のことだが、同日の13時頃に黒電話が入ったが、相手は非通知で留守番録音は無かった。また、電源を切った携帯電話を翌10日に開いてみたが、9日午後から10日朝までに相手からと思える非通知電話が数回入っていたが対応はしなかった。 さらに、今これを書いている10日の午前8時45分だが、非通知の電話が数回入って来た。勿論無視し、会話はしていない。
さらに、期待しないままにギフト券の発行元(アップルサポートセンター)に電話で問い合わせたが、既に2枚とも即、使用済みだで何ら取り返すことが出来ないと言う報告を頂いた。
後 記
* 自分自身は、パソコンからの振り込めサギに合うことは無いと思っていたが、それは甘かった。パソコンの最大手マイクロソフト社のセキュリティ部門からのダイレクトな緊急通知だと思わせられたもので、信頼しているマイクロソフト社からの案内には、従うことが当然であると思い込んでしまったのだ。 また、相手が外国人であったこと、組織表や担当者の顔写真なども示され、信用してしまった。
* 結果からすると、30万の要求を15万で食い止めることは出来たものの、相手から、金を要求されたこと、急がされたことを、もっと冷静に理解し判断すべきだったと思う。
*パソコン操作に未熟で有り、こうした人間を狙った犯罪である。・・今回の経験から、緊急事態に陥ったときには、パソコン本体のスウィッチで切ってしまうこと、また、後日、経験者から聞いた話だがコンセントからプラグを抜いてしまうことも・・・、止む負えない措置であることを教わった。
* 被害者である自分には相手の要求等一切の証拠となるものは残っていない。残っているものは、使えなくなったアップル社のギフト券だけ(写真)である。警察に被害届を出しても金は戻ることは無いと思うことから、警察には、今回のこの事実をレポートにして提出することにした。同時に、この事実をここに公表することで、こうした事件の予防につながればと思った次第である。
* 事件のあった翌日10日、平塚警察から2名の担当が来てくれた。事情を話し、この文の原案を渡した。警察官からは、同じ事案はかなり多いとのこと。被害金額は100万円単位で引っかかっているとのこと。 今後とも充分注意し、何かあればすぐに知能犯係りか地域課に連絡してほしい。・・・との助言を頂いた。また、今回の事案にかかる関連した何かが有った際には、当方としての協力は惜しまないことを約束した。
2023.R5、10.10