「おもしろ・・」などと云うのは相応しくないのだが、半世紀前のキス針で、今風に言うのであれば「時代遅れ」のハリ・・。そうした点から見ると面白くも見えるのである。
恐らく、その時代の先端を行ったキス針だと思うのだが、今のハリと異なった点は、先ず「太軸で重い」という事である。
同じような大きさで最新の「鱚介アブミ・5号」は、太さが0.33?径であるが、この「丸キス1.5号」は、何と倍の0.65?径と太く、当然、重量は2倍以上はあろう。
もう一つは、ハリスを結ぶチモトの形である。今のキス針の多くは「タタキ」と云ってチモトが平らに叩かれているが、このハリは「切り込み」といって字の如く切り込みが付いている。
また、その時代の最先端と云ったのは、針先が内側に向いた技術的にも難しい「ネムリ」となって居ることである。このように、掛かったら外れにくい構造を持ったハリだから「投げ釣り」や「船釣り」で使うことよりも、どちらかと云えば、漁師の「キスの延縄(はえ縄、キス縄)用」に造られたのかもしれない。
何れにしても、この一つのハリから解かることは、釣り針製造技術者の弛まぬ努力によって、材料や製造技術が如何に高度に進化したのかが良く分かる。
同時に、半世紀も前にこうした小さく精巧なハリが造られ、現在に繋がった進化の事実を見れば、今や日本の釣り道具(単なる釣具では無く[道具」である)が、世界一だと云われる所以が良く理解できるのではなかろうか。
以前、書いた事があるが、もりげん?の「キスZ」が同じキスのネムリ針である。・・・置き竿での効果が期待されるハリであり、この「丸キス」も十分、今に通用するものと考えている。
鱚鈎:丸キス1.5号
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執筆者:高澤鱚介