形状記憶合金で造られた真直ぐなテンビン・・。先に、販売まで漕ぎ付けた「鋭感一直 ALL SMAB」のことです。実は、販売開始して僅かな期間ですが、これを待っていました!と云う全国のベテランキャスターの方から注文を頂いて居ます。
シーズン外れの今?・・と、この人気に驚いています。・・・ただ正直言って、造る楽しさを超え、少し苦痛を覚えるこの頃です。苦痛の一因は、手間が掛かることが第一です。・・工程を種別に分けると23工程、細かなものを加えると約30工程にもなり、最後にはエポキシコーティング等、ペイントの乾く時間も必要なのです。また、少し頑張ろうと作業に掛かるのですが、今度は手首や肘に痛みが出るなど、老人になってしまった弱さがもろに出てしまうと云った悲しさも伴うのです。
・・・で、儲かるのでは?・・いや・・いやまったくそうではありません。材料の直線形状の形状記憶合金は種類も少なく、入手しにくく、合わせて高価なのです。それと必要な部品の特注、一定量の確保等々が重なります。・・・ただ、私自身も使ってみて、それだけの価値観があることを強く感じていますから商品化し、投げ釣りの楽しさに貢献できればと思うのです。多分、お使い頂いた方にはこうしたことも理解頂けると思っています。
まあ、そんなこんなで、時には「在庫なし!!」ということが有りますが、どうぞ勘弁願います。
実は、私自身、加工の難しい形状記憶合金が、こうした使い方が出来るとは思ってもみなかったのです。形状記憶合金はテンビンのアーム側にあって、いわゆるL型のアームのみに効能があると考えていたからで、それも、釣りの技術上かなり「扱い難いテンビン」だと思い込んで居たのです。
しかし、この直線テンビンでの効能は、食い気を誘ったりする魚との直接的な効能ではなく、主として投げた際にテンビン全体が弧を描くように反うことで、仕掛けを絡ませることなくオモリを飛ばすこと、オモリを海中に落とし込むこと、そうした効能を発揮するのが形状記憶合金であることが理解できたのです。ただ、テンビンが海底にあって、L型が良いか、直線が良いかなど、魚とのやり取りについては別問題として、人様々、状況によっても違うと思いますので、そこらへんは釣り人自体で評価頂き使い分けが必要だと思います。
最後に、ALL SMABは3種類ありますが、どれを選ぶのが適当なのかです。
1号は、軸部(オモリ止めまでの上部)が1.0mm、アーム部(オモリ止めから先端までの下部)が0.8mmと、径の異なった線をWクリップで止め、この部分でオモリを止める役割をさせています。長さは軸部が12㎝、アーム部が15㎝で、合わせて27㎝です。遠近の投げ、オモリ負荷はフリー、ハリ数フリーといった万能なテンビンを意識しています。
2号は、軸部からアーム部までの全長が27㎝で、1.0㎜径の同一径線で造られています。造った当初の設計では、重いオモリでの遠投、多点バリを意識していました。しかし、実際に使いこんでいく中で、軽量なオモリなどのライトタックルとして使っても全く問題は無いことが分かって来ました。・・・正直言って、1号の存在が心配になっています。・・正に、万能に使用できるテンビンではないかと思うようになっています。初めて使う方にはこの2号からお試し頂くことをお薦め致します。
3号は、2号と同じように0.8㎜径の同一線径で造っていますが、長さは若干短めの23㎝で仕上げています。このテンビンは正にライトタックルを好む方に使って貰おうと造りました。しかし、実際には、重いオモリやハリ数などをあまり左右されずに使えることを確認しています。
以上ですが、直線テンビンには共通した二つの課題があるように思っています。一つは、アタリ外れを防ぐにはどうしたら良いか。二つは、多点バリでの連釣りをするにはどうしたら良いか?です。これら以外に釣り人それぞれに課題を感じることがあると思いますが、この「鋭感一直」は、この投げ釣りの世界では「新参者」です。・・・お使い頂く方それぞれが「技」を磨いていただく中で、これら課題は解決して頂けるものと思っています。
なお、完成したとは申せ、これから使い込んでいく中でマダマダ改良すべきことがあるのではないかと思っています。今後お求めになって、もし変った点を発見なさったら、それは「進化した!」のだとお受け止めて頂ければ幸いです。