投げ釣りマンにとって、“尺ギス”を釣ることは夢である。因みに尺ギスとは30センチを超えるようなジャンボサイズのキスで、別称“肘タタキ”などとも呼ばれる。
タイトルを見て、その尺ギスを釣ったのか!!と、ドッキリされた方が居るかもしれない。だが、そうではないからご安心を!!
朝日新聞の「天声人語」。私は普段、あまり「面白い」と感じながら読むことはなかったが、5月1日のそれは、一人の釣り人としての立場から面白く読ませてもらった。まだ読まれていない方が居られると思うので、中身を引用させて頂きながら、チョッと感じたことを言わせて貰おう。
[“魚の定義”というジョークがある。<魚とは、逃げた時から成長が速まる生物である> ・・手元に寄せて逃した一匹ほど、大きいものはない。悔しさが想像を膨らませ、人に話すたびに両手の間隔が広がっていく。]と、・・うんうん、その通りだ・・面白い。
そのあと[身長1?強、重さ27キロ、推定100歳のヒレグロメヌケ(メバルの仲間)が米アラスカ沖のベーリング海で捕れたこと、魚の年齢は頭の骨にある耳石か、ウロコの縞模様で勘定すること、アジやサバは5年、タイなら20年は生きること]などが書かれている。・・これも興味をそそられる。
その次には、「・・殆んどの魚は小さいうちに他の生き物に食べられ、魔の手は水の上からも伸びてくる。魚と人の関係を思うとき、金子みすずの代表作「大漁」に行き当たる。<鰯の大漁で浜辺は祭りのようだけど、海の中では何万と言う鰯が弔いをするだろう>・・・そして、結びに近づく[魚は大切な栄養源だ]と書かれている。
・・・実は、ここまできた時、やはり何時ものパターンなのか、叉、釣りや釣り人に対する非難が始まったのかと・・一瞬思え、正直不愉快さを感じたのだ。
ところが、そうではなかった。結びには[漁業や釣りは彼らの平均寿命を少し縮めているはずだが、縮めた分は我々に上乗せされている気もする。ならば魚も本望か。年齢不詳の丸干しをかじりながら、身勝手な仮説を転がしてみた。]・・とある。
・・・何と爽やかな結び方だろう。恐らく、筆者は、釣り道に長けた、本物の“釣り師”の一人に違いないと思う。
私もこうした嬉しい仮説を頂きながら、せっせと釣りに勤しみ、メタボリックなどとは無縁な栄養源を確保しようと思っている。
因みに、写真の尺ギス(30・6センチ)だが、文献を見るとシロギスが20センチになるには約5年もかかるという。また、その後の伸長は年1〜2センチ程度と聞く。
これを私が釣ったのは南国高知で、水温も高く、エサも豊富だから、年1・5センチの伸長と類推して約13歳以上ということになる。ついでに言ってしまうが、これは私にとって生涯2尾目の尺ギスなのである。
なお、シロギスの日本記録は、平成9年11月に五島列島で釣れた36・4センチの、正に“まぼろしのシロギス”だと言われている。
尺ギスは何歳か?
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執筆者:高澤鱚介